特集
前海勃興と深圳オフィスマーケットの変化
中国の経済・金融の中心都市の一つである深圳には、
高品質なビジネスリソースが大量に集まっている。「
深圳市新興産業全体計画(2009~2015年)」による
と、新興サービス業は今後の発展が見込まれる産業で
あり、2015年には第三次産業の60%を占めると予測さ
れていることから、深圳オフィスマーケットの迅速な
発展を支えるものと期待される。
香港と珠江デルタ地区の協力関係は、近年ますます強
まっている。香港の一部の第三次産業企業は、コスト
の低さと大陸市場の急速な発展に乗り遅れまいと、機
能を徐々に内陸に移転させている。また、交通アクセ
スの利便性も近年さらに高まり、深圳―香港間が地下
鉄で結ばれたことと深圳湾海上大橋の開通により、両
都市間の人・物の移動が大変活発になっている。深圳
は、広東省と香港の協力関係の中核都市としてその利
益を最も受けている都市である。
図1 深圳市主要ビジネスエリアの変遷

珠江デルタの発展と、広東省と香港の協力を加速させ
るため、国務院は2010年に「前海・深圳・香港新興サ
ービス合作区発展計画」を承認し、前海に全国新興サ
ービス業の重要拠点を建設し、中国の新興サービス業
の高度化を牽引するモデル地区とすることを明確にし
た。新たな発展計画により、深圳は羅湖や福田を中心
とした従来の発展の構図を崩し、前海を中心とした西
部地区の発展を加速させた。
深圳最後の未開発地とされる前海合作区は、深圳の西
側の南山区に位置し、珠江デルタ湾の中核エリアにあ
たり、香港とのつながりが密接である。開発計画面積
は18万平方キロメートル、地下鉄1、5、11号線、2都
市間快速線、広州―深圳沿岸高速道路によって深圳と
香港を結ぶ計画である。そのほかの具体的な産業計画
も徐々に明らかになっている。2011年7月6日、「深圳
経済特区前海・深圳・香港新興サービス合作区条例」
が正式に公布された。同条例によると、前海協力合作
区で登録した企業が、オフショアアウトソーシング業
務、物流、技術先進型サービス等の新興サービス業に
従事すると優遇政策を受けることができる。開発計画
によると、前海は2016年から2020年の間に国際競争力
を備えた新興サービス業システムを構築し、アジア太
平洋地域ひいてはグローバルな新興サービス業分野で
重要な役割を担うことを目指している。その頃には同
エリアのオフィスマーケットも成熟していることを期
待して、同エリアへの巨大投資にすでに興味を示して
いる企業もある。2011年上半期の時点で、投資金額を
明確にしている重点物件は11件あり、このうち2件は百
億元を超えている。また、すでに投資の意向が明確に
なっている45件のうち、地域本社物件が全体の34%を占
める16件、その他が研究開発物件である。
深圳市のCBDは東側から西側へと発展してきた。地王大
厦をランドマークとする羅湖ビジネスエリアは、早い
時期からオフィス物件が集中したエリアである。2000
年以降、福田CBDの建設が加速し、深圳市オフィスマー
ケットの重心は羅湖から福田エリアに移った。福田CBD
はすでにグレードAオフィスが最も集中する中心エリア
となり、外資系企業が深圳に参入する際の第一候補地
となっている。現在、海岸沿いを中心とする南山商業
文化センターおよび深圳湾金融ビジネスエリアの建設
により、南山区の優良オフィスの供給も増加を続け、
深圳マーケットでは第二位の人気エリアとなってい
る。同エリアのオフィス面積が全市に占める割合は11%
(2011年第3四半期)から2015年には26%まで上昇する
であろう。
2015年以後、前海合作区における開発の推進に伴い、
深圳の優良オフィスマーケットは羅湖―福田CBDと前海
CBDの2大CBDが台頭し、ともに発展する構図となるであ
ろう。前者は、市全体の総合サービス機能の中心とな
り、前海・後海・宝安を含む前海CBDは、エリア性の生
産関連サービス業、地域本社および高付加価値サービ
ス業の集約地となるであろう。
相対的に見て開発が進んでいるのは羅湖―福田CBDであ
るが、前海は良好なロケーションと豊富な土地資源と
いう優位性を持っており、今後の都市発展に伴う産業
構造の高度化にも耐え得る。インフラ建設と政策のさ
らなる充実に伴い、前海が深圳オフィスマーケットの
今後の長期的な発展の中心と原動力となるのは必須で
ある。
図2 2015年までの深圳優良オフィス分布割合